賃貸借契約が終了し、貸借人が退去するとき、「現状回復費用」を請求される場合があります。
貸借人にとって納得できる費用であればトラブルになりませんが、その範囲をめぐって退去時にトラブルが発生することがあります。
★現状回復、どこまでが貸借人の責任か
一般社団法人全国賃貸不動産管理業協会のサイトに「現状回復ガイドライン」が提示されています。
裁判の判例によると、「現状回復とは」通常摩耗分をもとの状態に回復することでなく、貸借人の故意・過失等による劣化の回復を意味する、との判断を示してきました。
具体例として、貸借人が負担するべきものは、飲みこぼし等のシミ、冷蔵庫下のサビを放置したための汚損、引っ越し作業時の壁の傷、ペット等による傷や臭い、喫煙によるヤニ汚れ、天井に直接付けた照明器具の跡、風呂・トイレの水垢、カビなど日常の清掃を怠ったために生じた汚損などとされています
逆に賃貸人(家主)の負担となるものとしては、家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡、テレビ・冷蔵庫等の後部壁面黒ずみ、壁に貼ったポスター等によるクロス変色、畳変色、フローリング色落ち、下地ボードの貼り換えが不要な程度の画鋲、ピンの穴、設備機器の故障(機器の寿命)。
これらは貸借人は負担しなくてもよいとされています。次の入居者のために行うクリーニングや畳やカーペットの張替えなども当然、賃貸人(家主)の負担で、借主が負うものではありません。
★日々の清掃は大切、責任はないとされても注意はしておきたいこと
上記のように、家具による床のヘコミやポスターの貼りあとなどは責任ではないとしても、あまり残したまま退出はしたくないものですね。冷蔵庫やテレビは壁にあまりくっ付けて設置しない、家具の足は細いものは選ばない、または下に板などを敷くなどの対策をしておいたほうが、退出時に嫌な思いはせずに済みそうです。
それよりも風呂やトイレの水垢やカビなどが清掃を怠った借主の責任とされるほうが心配です。無精な方は要注意。清掃は小まめにしましょう。
★賃貸住宅では退出時のことを考えておきたい
原状回復については、あまり神経質にはならなくてもいいでしょう。それよりもたいへんなのが、住んでいる間に増える家具などです。自分で設置した家具・家電は当然、全て退出時には持ち出さなければなりません。
あまり高額な家具はさけて、簡単に組み立て解体ができるような家具にする、軽いものにする等、賃貸住宅なら、考慮して購入したほうがいいかもしれません。
また、頻繁に引っ越しをする可能性がある方は、家具・家電付の賃貸物件にするという方法もあります。